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執筆者の写真服部次郎

「銀幕の果てに」観劇記

一昨々日(26日)、制作:つかこうへい事務所、作・つかこうへい 演出・岡村俊一「銀幕の果てに」(紀伊國屋ホール)を観た。


私は、1975(昭和50)年9月、当時青山にあった「VAN99ホール」において、旗揚げ間もない「つかこうへい事務所」の「熱海殺人事件(部長:坂本長利/刑事:平田満/婦警:井上加奈子/犯人:あがた森男)」を観て以来の大つかこうへいファンである。その後、三浦洋一・風間杜夫の部長、加藤健一の金太郎など、今日語り伝えられる「熱殺」の名舞台はほとんど見てきた。顧問をしていた演劇部でも「熱海殺人事件」を上演したほどのつかファンである。


2010年につかさんが亡くなったあとも、2015年12月の風間さん、平田さんコンビ復活での「熱殺」再演(紀伊國屋ホール)など、つかと聞くと見過ごせない。今作は、1994年に小説として書かれたものをつか作品の後継者的演出家の岡村さんが舞台化した。ついつい観たくなってしまった。


秩父山中にあるという設定の映画撮影所で往年の大女優・玲子(矢島舞美)を迎えて映画「火の鳥」を撮影している。この撮影所に隣接して原子力発電所があり、それを巡って暗躍する内閣官房長官・村雨(味方良介)、燃料棒を切り裂くハサミの謎、恋人の死を巡って玲子に恨みを抱く脚本家(石田明)、撮影している映画の天才監督(松本利夫)、照明家(佐久本宝)などがからんで多層的な物語の現実と虚構が錯綜して目まぐるしく展開する。例によって、間なし、芸なし、息継ぎなしの絶叫芝居で2時間を疾駆する。


映画撮影所での大スターと大部屋俳優との確執は「蒲田行進曲」を彷彿とさせるし、「米軍が長崎に原爆を落とす前日に日本軍は佐世保港の軍艦を避難させた。日本軍は取引をした。長崎を売り渡した代償が戦後の原子力発電所なのだ!」というつか流アイロニーは「広島に原爆を落とす日」を彷彿とさせる。荒唐無稽な物語の中に、25年も前に、原発政策の行き詰まりを予見していたことも、舞台を今大注目の埼玉・秩父に設定したことも、つかさんの先見性が光る。


岡村さんの演出は映像を多用するところは新感線ぽいが、今風でいいとしよう。お笑い芸人ノンスタイル・石田明、エグザイル・松本利夫がすっかりつか芝居にはまっているのには感心した。例によってタキシードでダンスするカーテンコールはかっこよすぎてたまらない。最近ダブルのカーテンコールは珍しくないが、この日は拍手鳴りやまずトリプルまで行った。つかこうへい、最高\(^o^)/





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