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執筆者の写真服部次郎

「ハムレット」観劇記

昨夜(14日)、シアターコクーン・オンレパートリー2019 作・シェイクスピア 翻訳・河合祥一郎 演出・サイモン・ゴドウィン「ハムレット」を観た。


ハムレットを今更説明するのはヤボだが、シェイクスピアの最高傑作とされる。ある演出家によると、世界の演劇は、ギリシャ悲劇・シェイクスピア・チェーホフ・ブレヒトを四つの大きな頂きとするそうで、シェイクスピアを疎かにしては世界の演劇は語れないそうだが、大きな声では語れないが、私はシェイクスピアは好きではない。それでもハムレットとなると観ないわけにはいかない。これまでも、仲代達矢、山本圭、市村正親、藤原竜也と当代を代表する舞台役者のハムレットを観てきた。ローレンス・オリヴィエの映画も観た。


ハムレットを演じないと時代を代表する舞台役者となれないのだろう。岡田将生の大挑戦である。オフィーリアに黒木華、ガードルートに松雪泰子、ポローニアスに山崎一、クローディアスに福井貴一、レアティーズに青柳翔とシアターコクーンらしくしっかりと脇を固めている。


演出家は本場イギリスの第一線だそうで、美術・衣裳も一流デザイナーらしい。古典劇の上演はあらゆることがすでになされているので、逆に何をやっても構わない。冒頭シーンでいきなり現代的な軍服を着た兵士が拳銃を構えるのにはびっくりしたが、ああそういうことなのねと合点した。コクーンの大舞台の天井にまで届きそうな3階建ての3面回転舞台の壮大なセットも現代的で、中世ヨーロッパは感じさせない。


ハムレットはシェイクスピア劇中最長で昔の上演は4,5時間はかかったと思うが、休憩をはさんで2時間35分である。確かに展開が早くスピード感はある。名場面はちゃんと押さえてあるからいいのだが、なんだかダイジェスト版を観ているような感じである。


これは演出の問題で、役者のせいではないと思うが、ハムレットの葛藤と苦悩が伝わってこない。国王という強大で邪悪な権力と戦い、復讐と正義の実現に苦悩する若き理想主義者の悲劇が伝わってこない。クライマックスの剣戟シーンも現代的なフェンシングの闘いにしたのは成功とは思えない。ラストシーンは、全然よくない。フォーティンブラスが新しい権力者として君臨するという意味だろうが、前に観た上演で、ハムレットの遺骸を乗せた台を兵士たちが捧げ持つラストシーンの方が悲劇性が高まって全然良い。


岡田将生の人気はすごい。開場ちょっと前に着いたが、コクーン前のスペースはぎっしりだった。客の8割がたは女性である。カーテンコールの拍手鳴りやまず、私のキャリアハイの4回だった。岡田将生の人気のなせることと感じた。


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