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執筆者の写真服部次郎

「オレステイア」観劇記

11日(火)13:00開演 新国立劇場演劇2018/2019シーズン  原作:アイスキュロス 作:ロバート・アイク 翻訳:平川大作 演出:上村聡史「オレステイア」(新国立劇場中劇場)を観た。


三大ギリシャ悲劇作家の一人アイスキュロスの代表作「オレステイア」三部作を軸に現代イギリスの劇作家・演出家ロバート・アイクが新しい視点で再構成した戯曲である。


原作となった「オレステイア」三部作。国王アガメムノンはトロイア戦争に勝つための神託を受けて娘イピゲネイアを生贄として殺す。それを怨んだ王妃クリュタイメストラは戦争から凱旋したアガメムノンを殺す。残された王子オレステスは、姉エレクトラの助力を得て母クリュタイメストラを殺す。宿命と欲望に翻弄されるギリシャ悲劇の決定版ともいうべきドロドロのお芝居である。心理学で女児の父親に対する独占欲的愛情をエレクトラコンプレックスと呼ぶのはここに由来している(男児はエディプスコンプレックスというのもギリシャ悲劇「オイディプス王」が由来)。


さて、アイクの翻案は、王子オレステス(生田斗真)が、精神科医(これがコロスに相当するらしい)と向き合いながら、この三つの殺人事件を検証していく形で進行する。だから、生田くんはオレステスが実在しない場面でも常に舞台上にいることになる。


最初の議論は、父アガメムノンが戦争に勝つために娘を殺したのは正義であったのかどうかだが、国を護るために個人の犠牲はやむを得ないのだという権力者の論理と、家族を守ることが父親の第一の務めだという母クリュタイメストラの個人の論理の激突である。で、次は母が父を殺したのは正当であったのかという議論をしてゆき、そして次はとなってくるとさすがに疲れてくる。この人たちは、何のためにこんなに熱く語っているのだろう?という感じになって来る。あ~~、なんだかついて行ってないって感じになって来る。ギリシャ悲劇に詳しい人なら、アイクの新しい視点の意味とかわかるんだろうが、浅学なる私程度では意図がよくわからない。そしてラストは、「オレステスは無罪!」という結論になり、オレステスは叫ぶ!「ぼくはどうしたらいいんだ!」。う~~ん、よくわからん!


新国立劇場中劇場(中と言ってもオペラの大劇場に対してで、演劇的には大劇場である)の大舞台を駆使した舞台美術は素晴らしい。出演者も熱演である。特筆すべきはクリュタイメストラ役の神野三鈴さん、これまでも何回か拝見したが、今回の舞台ではひときわ光っていた。私の娘が中学生の頃に大ファンだった生田斗真くん、立派な主演でした。この難しいお芝居も生田くんのファンが詰めかけることで一ヶ月公演も満席になりそうです。上演時間・休憩2回を入れて・4時間20分、最近の最長です。お疲れ様でした。


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