昨日(11日)、梅田芸術劇場プロデュース 作・蓬莱竜太 演出・日澤雄介「まほろば」(東京芸術劇場シアターイースト)を観た。
観劇動機は、松本大介君の照明デザインであることだが、そのつながりで先月に観た「母と惑星について、および自転する女たちの記録」で、すっかり蓬莱竜太ファンになりつつある上に、演出が昨年11月に観て衝撃を受けた劇団チョコレートケーキ「遺産」の日澤雄介さんとあっては期待値最高で観た。
長崎の田舎町、盛夏、今日は町を挙げてのお祭り、地元の名家としてとして知られる藤木家の大座敷では夜の宴会の準備に女衆は忙しい。この旧家の大座敷の舞台装置が素晴らしい。シアターイーストは小劇場規模だが、まるで大劇場並みの壮大でリアルな大道具である。開幕前にこの大道具を見せられては期待値はますます高まる。
この旧家を取り仕切っている母(高橋惠子)は、跡取りのいないことが大きな悩みである。祭り見たさと称して東京で働いている長女(早霧せいな)が帰ってきているが、付き合っていた男とうまくいってないらしい。奔放に生きてきた次女(中村ゆり)は、父親知らずの娘ユリア(生越千晴)を育ててこの家にいるが、またもや地元の男とよからぬ仲になっているらしく、その男の娘(安生悠璃菜)をこの座敷に呼んでいる。ちょっとボケが来ているかと思わせる祖母(三田和代)もいる。
登場人物は女性ばかりの6人、まず、長女と次女の壮絶な姉妹喧嘩が始まり、母親の大説教があり、長女の深刻なカミングアウトがあり、そこへ東京へ出ていた孫娘ユリアが帰ってきて、これまた大変な事態になっており、次々に家族の問題が巻き起こる。軽快な笑いに支えられながら、女性の、その裏返しの男性の、そして家族の、また人間社会の問題が浮き彫りにされる。これは現代のチェーホフ劇であると思った。ちなみに「まほろば」とは、「素晴らしい場所」という意味の古語とのこと。大喧嘩をしたり、大問題を抱えたりしながら、この家が、この家族が「素晴らしい場所」だということなのか。
高橋惠子さんが貫録の演技であるが、長女の早霧せいなさんは初めて観たがとても印象的だった。中村ゆりさんはテレビでしょっちゅう見ていたが、舞台女優としても軽快な演技が好印象だった。ベテラン三田和代さんがいい味出していた。松本君の照明デザインに触れなければならないが、こういう立派な大道具の前でのリアリズム舞台では、照明は目立たないことがベストであり、その意味でベストであったと思う。
この芝居で、蓬莱竜太ファンを一歩前進させた。期待値最高を大満足させた。よかった\(^o^)/
留言